~こんな案件ありました~ 「死者が生き返る?」
・遺産分割調停で起きた出来事
ある遺産分割調停の場で、思いがけない出来事がありました。
亡くなったはずの方が「調停に出席したい」と家庭裁判所に連絡してきたのです。
・「亡くなった」Aさんからの連絡
この事件は、Aさんの母親が亡くなったことにより開始された遺産分割調停でした。
私は、Aさんの長女であるBさんから依頼を受け、Bさんの代理人として手続に関わっていました。
Bさんは「母であるAさんがすでに死亡している」との前提で、代襲相続人(親が死亡しているため代わりに相続する立場)として調停に参加していました。
ところが、家庭裁判所にAさん本人から「調停に出席したい」との連絡が入ったのです。
・「失踪宣告」による死亡
驚いて調査を進めたところ、Aさんは実際には亡くなっていませんでした。
Aさんはかつて夫のMのDVに苦しみ、家を出て行方が分からなくなっていたのです。
その後、Mが家庭裁判所に失踪宣告を申し立て、7年間生死が不明だったため、Aさんは法律上死亡したものとみなされていました。
その結果、戸籍上にも「死亡」と記載されていたという事情でした。
・失踪宣告の取消と「生き返り」
後日、Aさんは代理人を通じて失踪宣告の取消申立てを行い、裁判所によってこれが認められました。
こうして、Aさんは戸籍上も“生き返った”ことになったのです。
この取消しにより、Bさんは「母が死亡している」という前提が崩れ、もはや代襲相続人ではなくなりました。
その結果、Bさんは遺産分割事件の当事者でなくなり、私が受任していた事件も終了となりました。
このように、戸籍上は死亡しているが実際には生きているというケースは、稀に起こり得ることなのでしょう。
・ 逆のケースも?戸籍上生きているのに、実際には死んでいる人
今回は「死亡した人が生き返った」ケースを紹介しました。
次回はその逆、戸籍上生きているのに、実際には死んでしまっている例を紹介いたします。
こちらもまた、法律の世界ならではの興味深い事例です。