~こんな案件ありました~「夫の死後の離婚無効事件?」
1 はじめに
本日は離婚無効事件について紹介します。
この事件は、私が生涯に手掛けたわずか一件だけの離婚無効確認請求事件です。
事件自体は勝訴したのですが、その決め手となった証拠は、裁判提起後1年以上も経過してから亡き夫の自宅のゴミ箱から発見された、元妻からの手紙でした。
物語としても面白いので是非最後までお読み下さい。
2 事件の概要
この事件は、元妻Xが死亡した元夫Yに対して、死後離婚無効確認請求を提起したものです。
死者を相手方とする場合、被告は公益の代表者である検察官となります。
私はYの実子Y1,Y2から依頼を受け、検察官に補助参加しました。
離婚が無効となれば、相続人はXとY1,Y2となります。
Yは遺産として約2億円相当の財産を有していました。
その中に、A社の株式があり、Xの目的はまさに遺産の相続とA社の支配権だったのです。
またXの背後には元妻の弟がいました。
3 訴訟の経過
今回の事件はXがアメリカにいたため、Xの弟が離婚手続きを主導し、離婚届への署名・押印の代行をしました。
Xの主張は、「離婚届の署名・押印の代行にあたり、弟に承諾を与えておらず、従って、離婚は無効である。」とのことでした。
争点は、Xが離婚に同意していたか否かでした。
Yが既に死亡しており証拠も残っておらず、縷々主張しましたが、裁判官はこちらの主張を認めるかどうか分からない状態で
した。
また、署名・押印が弟によってなされていたため、こちらにとってかなり不利な状況でした。
4 ゴミ箱から発見された重要な証拠
そんな緊張した展開は突然動きました。
YからXに宛てられた長文の手紙が、ネクタイ等と一緒にゴミ箱に捨てられているのが見つかったのです。
手紙の中には、弟が署名・押印の代行することへの承認や、離婚に至る経緯、離婚の原因は自分にあることまで、赤裸々に綴られていました。
この手紙によりXの主張が嘘であることが証明されたのです。
5 勝訴
最終的に、Xの主張は認められず、離婚無効の訴えも棄却されました。
こちらが全面的に勝訴したのです。
あの時、証拠が見つかっていなかったら、結果がどちらに転んでいたか・・・
これが、私にとって最初で最後の離婚無効確認の事件でした。
今でも鮮明に記憶に残っています。