2023.09.19
~こんな案件ありました~「差し押さえた船が逃げた」
#板根富規弁護士#債権回収
ある時、船舶の修理代金を支払わなかった会社の船を差し押さえました。
その時、私のミスで執行官を船舶管理人に選任する申し立てをしませんでした。
まさか船を乗り逃げするとは考えもしなかったからです。
しかし翌日、造船所に行くと、なんとその船が跡形もなく消えていました。
2日後、鹿児島の谷山港に係留されていることが分かり、執行官・書記官と現場へ。
船を見た途端、「あっ」と驚きました。なんとエンジンが取り外されていたのです。
エンジンを納入した某社の仕業で工場に置いているとのこと。
差し押さえた船舶からエンジンを取り外した事例は日本の裁判史上初めてのことでした。
そのため最高裁の民事局と連絡を取りながらエンジンを取り戻し、船に積んで広島まで曳航(えいこう)。
その後、競売は順調に進み無事競落。しかし、船が差し押さえられ乗り逃げした会社は、エンジン取り戻し費用や広島までの曳航費用など余分に負担しなければならない結果になりました。
しかもエンジンが外されたままだったため競落価格も安価に。二重の損です。
逃げなければもっと高く競落された可能性や和解の道もあったはずなのに…。大きな損失を被る結果となった事件でした。