2024.06.19

ネットワークビジネスってなあに?

#スタッフ#法律事務#板根富規弁護士#契約・取引
1 身近なトラブル

1 身近なトラブル

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「すごく良い化粧品がある、安く売ってあげるから使ってみて!」
「必ず儲かる副業がある、あなたも会員にならない?」
「悪い話じゃないから、話だけでも聴かない?」
知人の強い勧誘に断り切れずに勉強会について行くと、これは今流行りの「ネットワークビジネス」で、会員となって商品を購入するように勧められた。
人を紹介したり、化粧品を売ることで月数十万円の収入が得られるらしい。
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こんな経験ありませんか。
この「ネットワークビジネス」はいわゆる「マルチ商法」です。

2 マルチ商法とは

2 マルチ商法とは

「マルチ商法」とは、販売員(会員)が新規会員を勧誘し、その新規会員がさらに別の会員を勧誘することを繰り返し、階層組織を拡大していく販売形態をとる取引のことを指します。
会員を連鎖的に勧誘する様から、日本では「連鎖販売取引」とも呼ばれます。
「マルチ商法」の問題点は、他人を販売組織に加入させることで、販売利益や紹介料等のアドバンテージを得るこの構造そのものにあります。
大半の事例で、大きな利益を得るために大量の商品を仕入れたものの会員の勧誘がうまくいかず、大量の在庫がそのまま大赤字となってしまいます。
それもそのはず、1人から2人、2人から4人、4人から8人・・・と会員が各々に勧誘を繰り返すと、32回目には約40億人まで会員が増え、次で地球の総人口を超える計算になり、すぐに破綻してしまうのです。
組織の下位に向かって会員数の階層が広がっている様から「ピラミッド・スキーム」とも言われます。
米国の連邦取引委員会の調査によると、マルチ商法に参加する少なくとも99%の人がお金を失うということが報告されています。
お金を得ているのは「ピラミッド」の上位1%にも満たないのです。
日本では1970年頃から徐々に流行りだし、大きな社会問題を引き起こしました。
お金を失う人がほとんどであるにもかかわらず、規制をする法律がなかったため被害者が後を絶ちませんでした。
最終的には「連鎖販売取引」として特定商取引法33条で厳しい規制をされるに至りました。

3 マルチ商法に対する法律の規制

3 マルチ商法に対する法律の規制

「マルチ商法」そのものは禁止されていません。
これは、マルチ商法が商品・サービスを販売する仕組みであり、適正な運営をしていれば事業を維持できる可能性があるからと言われています。
マルチ商法に対しては、もっぱら会員の勧誘と広告について規制がなされています。
以下は規制の例です
・会員の勧誘に当たっては、事業者名、勧誘目的、商品の種類を必ず明示しなければなりません。
・勧誘に当たっては嘘や脅迫などの不当な手段を用いてはなりません。
・広告には事業の具体的内容を明示しなければなりません。
これらの法律に違反した際には事業停止などの厳しい行政罰が課されます。

4 最近の「マルチ商法」業者の手口

4 最近の「マルチ商法」業者の手口

最近になっても「マルチ商法」は後を絶ちません。
業者の手口も時代に合わせて多様化しているようです。
以下は近年のマルチ商法の勧誘手口の一例です。

・若年層を狙う

今の若年層は「マルチ商法」が社会問題となった世代ではありません。
若い年齢層だと社会経験や知識が少ない人も多く、業者はそういった世代を狙って「マルチ商法」の勧誘を行います。
実際に「マルチ商法」被害の8割以上が20台の若者だという統計もあります。
後述するSNSやマッチングアプリ、オンラインゲームを頻繁に触っているということも関係しているでしょう。

・「違法ではない」

彼らのよくある言い分のひとつは「マルチ商法は違法ではない」ということです。
これは「ねずみ講」と比較すると、禁止されていないという趣旨で言われています。
比較のために、「ねずみ講」とは会員を増やした際の紹介料によって利益を得ることのみを目的としたもので、商品購入等を伴わないものを言います。
「ねずみ講」はシステム的に必ず破綻するものであり、法律によって禁止されています。
「マルチ商法」は商品の購入などを伴う仕組みで、持続可能性がありうるという点で手法そのものは禁止までされていません。
もっとも、「マルチ商法」の大半はねずみ講に当たらないように物品の購入等をさせるものがほとんどで、ねずみ講と同様の被害を生んでいたために厳しい規制が課されたという経緯があります。
現存する「マルチ商法」も大半は上位1%の会員しか利益を得られていないという事実を知っておきましょう。

「マルチ商法」ではない

現在、「マルチ商法」は詐欺まがいのものとして広く周知されています。
業者もそのことは承知しているのでは、自分のは「マルチ商法」ではないと喧伝します。
例として、「ネットワークビジネス」「ネットワークマーケティング」「MLM(マルチレベルマーケティング)」「リレーションビジネス」などと言い換えるケースが多いです。
MLMやネットワークマーケティングは、「マルチ商法」を英語にそのまま言い換えただけで、
内容はマルチ商法と全く同じものです。
日本の法律では「連鎖販売取引」にあたり「マルチ商法」と同じ規制を受けます。
表面的な言葉の言い換えに惑わされないようにしましょう。

・マッチングアプリなどを通じて勧誘する

近年は、若年層から中年層まで幅広く利用される、オンラインゲームやマッチングアプリ、SNSなどを通じて勧誘をするというケースが増えています。
手口としては、「今度会おうよー」という感じで勧誘目的を告げずに、実際に会ってみると「マルチ商法」の勧誘が始まるといった具合です。
このやり方は勧誘目的を明示していないため、特定商取引法の禁止する勧誘行為に当たり、違法な行為です。
2021年にはアムウェイの会員が、マッチングアプリで知り合った女性に目的を告げずに勧誘行為をした疑いで逮捕されています。
マルチ商法に限らず、オンラインで知り合った人と会うことは予期せぬ危険をはらんでいることがあります。
不用意に見知らぬ他人と会わないように、普段から心がけておきましょう。

5 弁護士にできること

5 弁護士にできること

上で紹介した「ネットワークビジネス」は全て「連鎖販売取引」にあたります。
商品購入をキャンセルしたい場合、特定商取引法に従い、契約書面を受領してから20日以内であればクーリングオフが可能です。
また契約書面がなかった場合や、書面に不備があった場合は、契約書面を受領したことにはなりません。
その場合はいつでもクーリングオフが可能です。
その他、事情によっては特定商取引法に基づく中途解約ができる場合や、商品の購入契約を解除できるケースもあります。
事実関係の確認のために、弁護士にご相談いただければと思います。