相続コラム第3回 相続財産はどれくらいあるんだろう?~相続財産の調査編~
1.前書き
前回の相談で、相続人の特定について説明し、今回の相続人はA子さん、A子さんのお母さん(B)、A子さんのお兄さん(C)の3人であると特定できました。
相続人が判明したところで、相続人の間で話し合いを始めたいところですが、まだ肝心の相続財産がどれくらいあるのか分かりません。
話し合いを始めるために、相続財産がどれくらいあるのか調べなければなりません。
今回は相続財産の調査について解説します。
2.おおまかな財産
A子さん
「父はお金の管理をほとんど自分でしていたので、どんな財産が残っているかほとんどわかりません。
〇〇銀行に口座があることは知っていますが、それ以外のものは私たちも正確に把握していません。」
回答
まずは、相続財産として考えられるものを挙げましょう。
・預貯金
・不動産
・証券など
・絵画、骨董品などの美術品
・仮想通貨
・借金などのマイナス財産
こういったものが相続財産となります。
財産を探すにあたっては、探すべき優先順位があるので詳しく話しましょう。
3.預貯金
まず大切なことは、預貯金を捜すことです。
相続人にとって最も関心が高いのは現金です。
というのも、不動産や証券、美術品など、金銭的価値はあっても、お金そのものではないので使うことができません。(当たり前のことではありますが)
お金は何かとご入用なので、現金そのものである預貯金を探すことが優先されます。
相続が発生すると、葬儀費用、相続手続き費用、相続税など、何かと出費がかさむので尚更でしょう。
預貯金を探すにあたっては、自宅に残された預金通帳を確認しましょう。
隠し預金があったりすると、通帳を探すのも一苦労です。
そういう時は、銀行からのハガキや通知が来ていないか確認してみましょう。
最終的に、相続人として、各銀行の本店に対し、相続人名義の預金の有無について照会をかけることとなります。
4.証券
株式や社債などの財産は証券に含まれます。
ほとんどの場合、なんらかの証券会社を通して口座を開設しているので、証券会社を特定しましょう。
証券会社と取引があった場合、証券会社からの報告書が必ず届いているはずです。
報告書があれば、証券会社に対して相続人として照会をかけることができます。
5.不動産
不動産を所有しているとすると、年に1度、固定資産税の納付書が必ずきます。
この納付書に記載されている不動産の、「登記簿謄本」を取る必要があります。
または、所有している不動産が所在すると思われる市町村(区役所)に名寄帳を請求すれば、どのような不動産を所有しているのか分かります。
6.美術品等(その他動産)
絵画や美術品などの財産は、「その他動産」としてまとめられます。
これら「その他動産」については、実際に探し出すほかありません。
自宅・倉庫・別荘などに保管されていないか探してみましょう。
美術品が大量にある場合や、貴重品については貸金庫や貸倉庫に預けている場合があります。
そういったサービスの業者からの通知やハガキを見つけたら確認してみましょう。
あるいは、通帳から利用料の支払いがあるかを確認してみてもいいでしょう。
7.仮想通貨
仮想通貨も相続の対象となります。
故人のスマートフォンやPCに仮想通貨の取引所のブックマークやアプリが入っていたら、仮想通貨の取引をしていたかもしれません。
まずは取引所に問い合わせてみましょう。
大半の取引所は相続手続きのための案内ページを用意しているので、誘導に従って手続きを進めることができます。
パスワードがわからなくても焦る必要はありません。
相続手続きについては、パスワードの有無にかかわらず応じてもらえます。
8.マイナス財産
残念ながら、借金やローンなどは、マイナスの財産として相続するものに当たります。
消費者ローンからのメールやハガキを発見した場合、借金等が残されていないか確認しましょう。
消費者ローンの場合、信用情報機関に開示請求をかけることで、借金の有無を調べることができます。
その他、通帳の引き落としの履歴や、自宅に残されている契約書の控えなどから推し量ることもできます。
マイナス財産の方が多く残されている場合、「相続放棄」をしたほうが良いことがあります。
相続放棄は、「相続が発生したことを知ってから3か月以内」が期限ですので、早急に調べておいた方がよいでしょう。
9.最後に
以上、相続財産の調査についての説明でした。
ご覧の通り、相続人のサイドでする必要があることが多々ございます。
不安な点やわからないことがある場合、故人の通帳や手紙、ハガキ、契約書などの重要書類一式を弁護士事務所に持ち込んでいただければ、残りの作業は弁護士に任せることもできます。
是非お気軽にお尋ねください。
ここまでで相続財産の総額まで調査することができました。
次回は相続財産の分け方「遺産分割協議」について解説いたします。
ご講読いただきありがとうございました。