相続コラム第1回 突然の相続ってどうしたらいいの?~遺言書の捜索編~
1.前書き
身内の不幸は予期しているときもあれば、突然やってくることもあります。
突然のことで準備もなく相続の手続きをしなければならないと言われても、具体的に何をしたらいいのか、想像もつかない方がたくさんいらっしゃるでしょう。
もしもの時のために、以下の仮設の相談をもとに相続の入り口から出口までをわかりやすく解説いたします。
相続コラム第1回は「遺言書の捜索」から説明しましょう。
2.相談
私の名前はA子と言います。
私は両親と同居していて、兄は東京で家庭を持っています。
先月父が急死し、葬儀の準備であわただしい毎日を過ごしていましたが、1か月ほど経ちだいぶ落ち着いてきました。
忙しくない間に財産の相続の手続きをしないといけないのですが、初めての相続で何をしたらいいかわかりません。
まず私は何から始めたらいいでしょうか?
3.弁護士の解説
相続の際に最も重要になるのが「遺言書」の有無です。
相続の手続きは原則として「遺言」に従って行われます。
なので、第1にすべきことは「遺言書の捜索」です。
まずは、最寄りの公証人役場に、あなたが相続人であることを証明する書類(戸籍謄本・除籍謄本・身分証等)を持参し、あなたの父の「公正証書遺言」がないか、探してもらいましょう。
この「公正証書遺言」とは厳格な条件のもとで作成された遺言です。
もう一つのパターンとして、「自筆証書遺言」が残されていないか探してみましょう。
「自筆証書遺言」とは読んで字のごとく、自分で書いた遺言のことです。
「自筆証書遺言」は、最近運用が開始された、遺言書保管制度を使って保管されていることもあります。
まず法務局の遺言書保管所に、「自筆証書遺言」の有無を問い合わせてみましょう。
問い合わせから予約をして、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本・除籍謄本等)と顔写真付きの身分証明書を郵送、あるいは持参する必要があります。
手続きが完了したら、法務局から「自筆証書遺言」の有無について、証明書が発行されます。
詳しくは法務局をご参照ください。
そのほか、「自筆証書遺言」の場合、自宅の金庫やお父さんの寝室、書斎の周りに保管されているケースが多いです。
自宅以外では、司法書士や弁護士、銀行、故人の事務所等に遺言が保管されていることもあります。
日頃の付き合いがあった知人等に確認してみましょう。
遺言書が見つかった場合はむやみに開封せずに家庭裁判所に連絡をします。
なぜかというと、遺言書の偽造を防ぐために、家庭裁判所で「検認」をしてもらう必要があるからです。
故意に開封すると5万円以下の過料(行政上の罰則)を科される可能性があります。
もっとも、誤って開封した場合に過料はなく、自筆証書遺言も無効となることはありません。
家庭裁判所に間違って開封してしまったことも説明したうえで指示を仰ぎましょう。
最後に、「遺言書の捜索」は念入りに行いましょう。
というのも、万が一相続手続きが終了した後で遺言書が見つかると、最悪の場合相続手続きをやり直さなくてはならないからです。
せっかくやった手続きを台無しにしないためにも、「遺言書の捜索」はしっかり行うことが大切です。
4.あとがき
解説は以上です。
相続コラム第1回は「遺言書の捜索」について説明させていただきました。
次回第2回のテーマは「相続人の特定」です。
ご講読ありがとうございました!