2025.09.19

~こんな案件ありました~「15階建てのマンションが7階建てに?その理由は?」その1

#板根富規弁護士#判例・裁判例#欠陥住宅・住まいのトラブル#不動産

今回は、私、板根弁護士が担当した「面白判決」の一つをご紹介します。

 

1.近隣住民からの依頼

今から15年ほど前のことです。
依頼者は地域住民およそ20名。近所で建築が始まったマンションについて、

「高さが高すぎるので、何とか建築を止めてほしい」

というご相談でした。
いざ建設中のマンションの建築の差止はほとんど認められた例がありません。私は依頼を聞くなり、

「まず無理ですよ。」

と正直に答えました。
それでも「やれるところまでやってください」との強い要望を受け、受任することとなりました。

 

2.争点探し

この種の事件では、相手方(業者)の法律上の弱点を突けるかどうかが肝心です。
調査の結果、業者の建築確認には大きな弱点がありました。
業者は2つの土地(A地・B地)を一体の土地として申請し、
その結果、建ぺい率・容積率を稼いで15階建ての建築確認を取得していたのです。
問題は、A地とB地の間に「通路」が存在していたことでした。
業者は、この通路は事実上廃止されているとして、一定期間誰も通行していないという観察報告書を提出。
それを根拠に、2つの土地を「一体」として確認申請をしたのです。

 

3.住民調査と理論構築

私が受任した時点では、すでに工事は始まっており、止める方法は仮処分申請しかありません。
まず住民に協力を依頼し、通路が本当に誰も使っていないのかを調査しました。
しかし実際には、この道を通ると学校や商店街に行くのに遠回りになるため、通行している人の存在を証明することはできませんでした。
そこで次の理論を展開しました。

①本来であれば、通路(里道)の上に建築物を建てる には、公用廃止と払い下げの手続きが必要である。

②通路は公用廃止されていない以上、業者が勝手に取り込むことはできない。

 

4.思わぬ発見

さらに調べを進めると、驚くべき事実が判明しました。
通路だと思われていた部分は、実は「青線」と呼ばれる水路だったのです。
誰がどのようにして通路にしたのかは不明ですが、おそらく何十年も前から土が入りこみ、自然に通路のようになっていったのでしょう。

 

5.仮処分申請と建築確認の取消申立へ

争点は完全に絞られました。
「A地とB地を一体として建ぺい率・容積率を算定した建築確認は違法・無効である。」
この理論で戦うことを決断しました。
そして、当時の同僚の青木弁護士と共に次の二つの申立てを同時に展開することを作戦立てします。

  1. 裁判所に対して仮処分申請
  2. 広島市建築審査会に対して建築確認取消申立

この両方を同時進行で行ったのです。
結果として、この判断が正解となるのですが、それはまた次回にお話ししましょう。

 

続きは「その2」でご紹介します。それではまた!