2023.08.17

相続コラム第2回 誰が相続人になるの?~相続人の特定編~

1.前書き

前回の相談ではA子さんに対して遺言書の捜索をお願いしましたが、残念ながら見当たりませんでした。
私の経験上、遺言書を残さずに亡くなられるケースは多いと感じております。
相続コラム第2回は、「相続人の特定」について説明します。

2.相続人の決まり方

A子さん
「前回の相談から父の遺言書を探したのですが、結局見つかりませんでした。
遺言書がないとして、このあとの手続きはどうしたらいいでしょうか?」

回答
前回、相続は原則として遺言書に従って行われると説明しました。
しかし、遺言書がない場合はどうなるのでしょうか。
民法は法律上相続人となる者「法定相続人」を定めています。
そして、相続は「法定相続人」の間で行われることになります。
法定相続人」となる者は、たいていの場合、亡くなった方(法律では被相続人と言います)の夫、あるいは妻(配偶者)と子供達(直系卑属)です。
(一部複雑なケースだと、被相続人の両親(直系尊属)や、兄弟姉妹が相続人となることもあります。)

3.相続人であることの証明

A子さん
「父の家族は母と私と兄の3人しかいないから簡単そうですね。」

回答
残念ながら、事はそう単純ではありません。
なぜなら相続人であることを「法的に証明する」必要があるからです。
この証明は運転免許証などの身分証明書では認められません。
そこで必要となるのが「戸籍」です。
具体的には、亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡するまでの間の全ての戸籍が必要となります。
さらに法定相続人が死亡していないか確認するために、法定相続人全員の戸籍(法律的には現在戸籍)を集めなければなりません。
仮に被相続人の子供たちが結婚して新たな戸籍を作っていれば、そちらの戸籍も必要となるでしょう。
法定相続人の数が多ければ多いほど、必要な戸籍の範囲や数が増える可能性が高まります。
私も多くの相続事件を受けてきましたが、戸籍を取り寄せるのに1か月以上かかるケースも少なからずあります。
これらの作業の積み重ねによって法定相続人を全員割り出さなければならないため、多くの時間がかかりがちです。

4.戸籍の取り寄せ

A子さん
「大変そうですが、自分でも戸籍を取り寄せることは可能ですか?」

回答
戸籍の取り寄せ自体、相続人であれば可能です。
法定相続人を確認するには亡くなられた方の戸籍の内容を見て、法定相続人が何人いるのか調べます。
しかし、古い戸籍は旧字体の手書きで記載されているものも多く読むのにも一苦労です。
また、戸籍記載の住所が旧名称、旧自治体の記載であることが多く、現在の名称と照らし合わせて確認しなければいけません。何度か転籍されている方の場合、転籍先から転籍元へと戸籍を順次請求していきます。
市町村の合併によって管理区分が変わっている場合、間違った自治体に請求しても取り扱ってもらえません。
そのほかの問題として、仮に法定相続人の中に死亡者がいる場合、その子供が法定相続人となります。(法律用語で代襲相続といいます。)
そのときは死亡した法定相続人の出生から死亡までの戸籍と、その子供の現在戸籍を取り寄せなければならず、必然作業量が増えます。
このように、戸籍の取り寄せとは言うものの、けっして単純な作業ではありません。
私たち弁護士に任せていただければ、ご自身の時間も取られませんし、安心してもらえると思います。

5.最後に

今回は「法定相続人」を特定するところまで解説しました。
言葉だと単純なようですが、戸籍の取り寄せは相続手続きの中でも時間がかかる作業の一つです。
ここまでで相続をする人を割り出すことができましたが、まだ肝心の相続する財産がどれくらいあるのかわかっていません。
というわけで、次回は「相続財産の調査」についてお話しします。
ご講読いただきありがとうございました。